世界中の歴史的芸術作品の多くは、工房で作られている。 例えば、天才ダ・ビンチでもそうであるし、日本でも本阿弥光悦他、江戸の絵師の残した版画は工房でつくられたもの。 一人の芸術家が全部を作るというのでは、作品も多く残せないし、生計も経たないのが実態。 売れっ子になるということは、作品点数が少ないというのでは名が知れ渡らない。
私の工房は、テーマ毎に人員を変えるフットボールの様なチーム編成。 惹伽銑と書いて、じゃかせん、とか、じゃかずくと呼んでいる。 惹は、ひとを引き付ける。 伽は、ずっと側にいて話している。 銑とは、鉄になる前の材料でもあり、弓の先っぽのあれで、作り手という意味と矢追の矢を意図したように射るための鍵のパーツとしてつけている。
織物では、テーマは私が作り、それに応じたデザイン画を纏める。 簡単なスケッチであるが、言葉と全く違うモノ、例えば料理を食べさせて、「この驚きと一緒のそれだ」と共感共鳴させて、デザイン画や特定位置の組織図を作り上げる。 ラフなデザインと一部の組織図を基に、紋紙担当が作りこみをする。 この紋紙の製作段階は、味付けその物で、味噌ラーメンにも醤油ラーメンにも、うどんにも、ソーメンにもなってしまう。 だから、簡単な組織を書いておいて、できるなら糸の太さや形状もある程度伝える。 工房では偶然の連発なので、制約を持たせすぎるとつまらない物しかできない。 公務的な仕事では、本物は生まれないのだ。
レザーでは、テーマは私が作り、最終イメージまでもまとめてしまう。 デザイン画の段階では、各工場のデザイナーの癖を知っているので、それを活かせるような指示をする。 癖を出してくれない時は裏切られた気分な位、計算に入っている。 それだけに、普段から、デザイナーとの飲みニケーションは欠かせない。 レザーは、いわゆる絵だけで成立しない。 艶やシボなどの影響が50%はある。 シボは、一つあたり数百万円の開発費が必要なので、各メーカーのシボは出来るだけ暗記しておかないと開発にならない。
満足することは少ないので、毎回数本は彫っている。 だから、海外でコピーされると直ぐに判る。 元々、自分が指示して作っている工房形式だから。
次期レザーサンプル帳では、惹伽銑のパワーが炸裂。 指揮している私は日々ヘトヘトです。 寝ても覚めても、あの1点の線が細い方がいいなと思いつめたり、艶をあと3%消した方が映えるな、とか。 此間は、私が書いた娑婆蛙というキャラが、大繁殖して、かえるの中でおぼれる夢にうなされた。 それだけ、魂を詰め込んだ沢山の新作が掲載されます。 期待してください。
椅子資材開発30年、日本一の椅子資材を開発する部隊の指揮者が、すわる、ねるの2つの姿勢を通して、商いの目で様々な出来事をつづる、思いあるブログ いすのことなら 椅子の張替えの話題や新規の案件、レザーとは、テキスタイルとは、椅子とは、すわるとは、ねるとは、様々な話題で楽しめます。 あしたは晴れかな曇りかな。
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