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2020年7月15日水曜日

抗菌ブーム再来。 抗菌なら売れる、では企業らしくない。

お客さんの声は、どの業種によっても大切であります。 きっと、声には切望なニーズがあるでしょう。  問題は、それが正しいニーズであるか、倫理的にどうなのか、深く調査をしていかないと、本当のニーズに応えられないだけではなく、開発コストは勿論、許可を出す特殊な法人への登録費用などは特に多額で、損害もでてしまいます。 損害は、次の開発コストに響くので、出してはなりません。 開発コストは膨大にかかるのです。

ニーズの勘違いは、匂いがその一つです。 消臭は日本人独特の趣向と言われていますが、洗濯物に香りが付く機能においては苦情も多い。 マンションで隣のベランダから香る匂いで気持ち悪くなり、自分の洗濯物に移っているかも、と、隣に苦情を出してトラブルになったり、メーカーに自分の服に匂いが移ったか調査しろだとか。 一部の人の良かれをニーズとしてしまうと、とんでもない訴訟がちらつく、問題だらけの対応になってしまいます。 アレルギー的に、くしゃみが出て、それが匂いのせいだという、原因は多数考えられる苦情もある。 証明できないから厄介ではなく、証明出来たら、訴訟和解という大損害に繋がる。 うちの子は、兄弟で趣向が違い、片方が気に入れば、もう片方は、この匂いなら着ないから、洗いなおせと女房にいう始末です。

抗菌もブーム時は、なんにでも入れろでした。 顧客のニーズだと営業部が言い張っていたのを思い出します。 当時は、私も営業部にいましたが。。。 実際に、世の中の新商品は殆ど抗菌だった。 一方、多くの医療関係者からは、不要だから外してくれと怒られるように言われたものです。 メンテナンスで除菌しているので、余分な機能はかえって怪しい。 シンプルな構造体のモノが良いという本当のニーズでした。 確かにレザーは、化学の結晶である。 ロングライフの為に、シンプルが一番いいのは、作っている我々が一番理解していて、営業のプレッシャーやニーズに負けている背景もあるものです。

ちなみに、私がオリジナルを作る開発では、余分なものは入れない。 単純な化学構成で、問題があっても特定できる範囲の添加物に納めます。 昔からの継続商品で抗菌機能付きは、現在は、比較的安全性が高いと思われるAgイオン抗菌剤へ振替はしましたが、新商品では例えAgイオンでも抗菌剤を入れる時は慎重です。 抗菌剤は、人に有用な菌も一緒にやっつけてしまいます。 ここ数年、沢山の論文を読みましたが、その場合、有用菌がダメージをしても問題はないという答えもなければ、菌類の耐性化はないんだという断定もされていない。 

仮に耐性菌に変わる手助けをしていれば、助長しかねない菌の特徴があるのに、添加した行為となり、人ならではの欺瞞、愚であると言って良いわけです。 そんな仕事をするために、椅子の資材に携わっているわけではない。 売れないから入れる、そんな程度で安心安全が担保が出来る商品開発をしてきたわけではないのです。 撥水の何とかクリーンとかも、唯のナノ撥水じゃないか! しかも、日本がトップの技術!と思いますが、営業のそれじゃないとダメ的なニーズに押されがちです。 弊社のAGE加工の方が成績が良くて安くて、どんな布にでも加工ができるのにです。 ついその前のニーズは、小ロットで撥水してくれだったのに、出来るようになれば、カッコいい名称のそっちが、高くても良いんだわ、です。 それ、ニーズではなく、現存する技術を紹介していない、される側も気がないだけの話ではないでしょうか。

抗菌は、25年くらい前のブームで、各糸メーカーはアクリル、ポリエステルなど、練り込み型の抗菌糸をブランド化して販売していたのが懐かしい。 織物担当は、糸メーカーの商標名とその組成、特徴、機能を頭に叩きこんでないと仕事になりませんでした。 今も其の商品群が弊社に残ってますが、抗菌の添加剤を入れていないレザーより売れたという事実は一度もない。 普通、拭けば取れるものに、わざわざ添加してコスト・リスクを増やす必要がないわけです。 ましてや、全ての菌に効くという商品は無い。 抗菌だらけの風呂場の筈が、カビや菌でピンクや黒になってしまう。 経験あると思います。 しかも、数年後にはしょっちゅうカビ退治しないと成らないはめに。

私は、抗菌グッズや制菌グッズは買いません。 抗ウィルスなどトンデモない。 私の身体の菌類まで死んだら、健康を保てません。 身体の菌の殆どは、悪い菌の繁殖を妨げてくれます。 入る余地がないくらい、自分たちが占領してくれる。 防御システムを揺るがす、トロイの木馬だと考えるからです。 実際に、菌類などは生命ですから、自分を押さえつけようとする相手が出現すると、生き残るために細胞分裂を活発にするという話があります、ストレス耐性ですね。 スキがあれば、寧ろ、身体に悪い方向へ変性するかもしれません。 又、変異の早いタイプのウィルスであれば、抗ウィルス剤が変性を助長する可能性も否定できない。

一番だめなのは、買う人は理解して買っても、使う人は知らないケースが殆どであること。 例えば、抗菌・抗ウィルス添加物が嫌いな私が、レストランで、この椅子は抗菌剤ははいっていますか?と聞いたら、応えられないでしょうし、私は変人でしょう。 要するに、私には影響があると思っているのに、抗菌剤が入った表面材を使っているとは、座る人=私にわからない。 菌を抑える程の深刻な事態(抗菌)において、使う使わないの選択権が明示されないのが椅子だということになります。

難しい話だったでしょうか。 

2020年7月3日金曜日

PVCレザーの汚れ落とし/椅子の汚れ

テレビで、どんな汚れも落としますというクリーニング屋さんの達人が紹介されることがありますね。実は、我々の織物の検品作業では当たり前に、同様の作業があります。
元々はワタですから、組成の違うワタクズも紛れ込んでいれば、工場内で油が付着した油クズが落ちて紛れ込んだりもします。 それを糸にして、撚糸して、染色して、糊を付けて整径して、織って、補修して、巾だしや風合い出しの加工している間に、それぞれの機械油が付いたり、すこしホコリがついたりです。 勿論、途中検品でも、シミ取り作業的なこともやられますが、最終検品では、さらに注意して綺麗にして出荷するわけです。 クリーニング屋さんの様な生活汚れでもないですし、しょっちゅう汚れて最終商品になるわけではないのですが、知識やテクニックは同様です。 私などは、クリーニング屋でなくても、レザーや織物の企画する仕事で、汚れ落としは必須の知識だと思いますから、汚れのメカニズムや汚れ落としは熟知しています。
基本は、
① 界面活性剤で乳化させて浮かせて取る
② 酸性、アルカリ性のpHで、中和することで取る
③ プラス又はマイナスイオンで、中和させて取る
④ 物理的なものは、ブラシで取る
⑤ 溶剤で溶かして取る

それらを組み合わせて汚れをとります。 汚れの正体さえ把握できたら、大方落とせるわけです。 織物場合、シンコールのテキスタイル総合サンプル帳の写真カタログP170と171に詳しく書いてありますので、参照してください。

さて、テキスタイルのシミと違い、レザーの場合は満遍なく汚れているのが良くわかるのです。 全体が皮脂や紫外線で変色していっています。 一か所、拭き取ると、その拭き取った跡だけが、色が変わった風になってしまい、結果全部を拭き取らなくてはなりません。 こうなると大変な作業です。 ですから、レザーの場合は、極端に落とすような作業はしないのが鉄則です。 そして、張替をするのが一番です。
どうしてもなら、やるしかないのですが、その大変な作業を次回のレザー総合サンプル帳で紹介したいと思います。 さて、ここでは基本の汚れ落としを書いて置きます。

大抵の汚れは、皮脂によるものです。 長い年月で、固まって取りにくいのですが、皮脂は弱酸性を示すので、アルカリ性の液体が効果的です。 アルカリ性の代表が重曹です。 食用のでも構いません。 セスキソーダでも構いません。 水の5%から10%の割合で溶いてください。 次に、汚れを剥がし落とすのは、界面活性剤の力が大きい。 そこで、前述の重曹溶液に食器用中性洗剤を数滴垂らしてください。 これで汚れ落とし剤が整いました。 

汚れている部分に溶液を垂らし、ガーゼ状の布で力を入れずに時計回りでぐるぐる回して、洗剤分が白くなるようしてください。 歯ブラシは、レザーの表面を傷つけ、汚れがそこに入り込んでしまうことで、後々に新たな汚れ源となるので、基本使用を避けてください。
どうしてもの場合の方法は、新サンプル帳で紹介する予定ですので、お待ちください。

次に、白くなったら、乳化されてきているので、若干力を入れてぐるぐる回してください。 そこから1分放置して、ぬるま湯で拭き取ります。 拭き取り作業は念入りにしてください。 洗剤成分がのこると、カビや菌の餌になるなど二次被害が考えられます。
椅子の汚れ落としの経験では、クエン酸(弱酸性)で効果は少ないです。 やはり皮脂が中心なのでしょう。 それ以上の汚れ落としは、化学的に内部へ入ってしまっていますので、諦めてください。 ある程度全体が落ちたら良しとするのが鉄則です。

革製品や新品のジーンズなどのモノからの染料移行は、汚れではないので落とせません。 移行は、一番多い事故ですが、基本的に私が企画するレザー商品は、耐移行のノウハウを付加してありますので、他社商品より、圧倒的に色移行の事故が少ないと言えます。 移行しにくいのに移行するのですから、諦めレベルです。 他社のモノはこの対応をしていませんので、同じ値段、安いなどに惑わされない様にしてください。 椅子は、耐久資材ですから、不満足になれば、不満足の期間が長くなり大きな不満になってしまいます。

汚れ落としの実験写真です。 白っぽく色が変わっている部分が、色々な方法で落としている実験状況です。 私は、汚れたレザーも全国から収集しています。 
落ちないとか、移行したとか、膨大な量になるので、問題解決したら捨てて、資料化はしていませんが、汚れの原因を追求、研究して、レザーに使うケミカル構成の開発に役立てています。
研究しないで、レザーサンプル帳の発刊はできません。 本質の問題を解決して、できるだけ値打ちに設計する会社ですから。 

引っ越ししました。

 個人でレンタルサーバーを借りて、引っ越ししました。 結構、お金が掛かりますが、HPの自由度が増すので決意。 より、知識重視にしています。  張替えてんやわんや というブログ名です。 https://sya-cho.blog/ 是非、引き続きご愛好をお願いします。