今回は、椅子の汚れを落とす実演をして欲しいという依頼があって、簡易カメラで撮影しました。 一本は、10年位使ったとのことですから、汚れ以前に、上の細い糸は切れていて、下の糸が見えていることで、余計にその部分が色が違って見えるし、ブラッシングしただけで切れそうなので、これは、即答で張替してくださいとなりました。 もう一本は、平織ですから、非常に丈夫。 全体的に黒ずんでいますし、スポット的にも古いシミがその黒ずみに隠れていたり、一見しただけで大変です。 そちらの落とした結果は、後日別の機会にして、今回は汚れの移動が解りやすいジャガードの例を見てもらいます。
シミ取りは、その部分だけきれいになってしまいます。 衣服と違って使い古した家具では、見た目以上に元の色が違います。 シミを落とすと、そこがスポット的に違う色(元の色)になるので、実際にはシミ抜きではなく、全部の洗浄が必要になってしまいます。 写真を確認してください。 中心の汚れが360度拡散してしまうのが解ります。
一部の洗浄=シミ抜きをしていると、水がしみ込んだ方向に汚れが移動してしまい、輪ジミ(水のしみた円状の外枠に汚れが集中し、より汚れてしまう。)が発生してしまいます。 全体の汚れを落とす必要がでてしまいます。 となると小椅子でも、一本あたり30分以上もかかるので、相当な暇と根気がいります。 椅子に張っていない状態であれば、裏をタオルであてて、多少ですが拡散はここまでしませんが、少しでも移動してしまえば、結局全部の洗浄となります。
これは(写真上)、汚れた状態。 全体も汚れており、さらにスポットで彼方此方がこのように。
これは(写真下)、シミ抜き後。 スポットだと洗浄水で汚れが拡散してしまいます。
見たところ、たばこのヤニ(水で溶ける)、人の手あか(たんぱく質他)。 先ずは、ブラッシングで、ごみを取り除く。 これだけでも結構綺麗になる。 → 界面活性成分が30%を超える中性洗剤を100倍に希釈しって、叩きしみ込ませる → 綺麗な布で押して汚れと残った洗剤共にシミ込ませて取る → お湯を絞った布で、軽くたたいて水をシミませる → 弱アルカリ性(重曹水やセスキソーダ水)で、上記を繰り返す。 → 60度のお湯で酸素系漂白剤を溶いて、上記を一度だけ繰り返す。 絞った綺麗な布に水をしみ込ませ、叩いてすすぐ。 ドライヤーを使ってよく乾燥させる。 *よく換気の効いた広い場所でやってください。
椅子のシミ抜きだと、このように、汚れが広がってしまうのです。
椅子に張ってなければ、裏からバキューム(掃除機で良い)で吸いながら洗浄剤をかけるので拡散は最小限です。 ちなみにクリーニング店では、バキュームは勿論、設備としてついていますが、揮発性のつよい溶剤で洗浄剤を混ぜて使うので、広がる前にバキュームと同時に蒸発してしまいます。
結局のところ、全部を洗う必要があるので、張替が楽ですね。