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2020年10月9日金曜日

La Banda ラバンダで聞かれる紡毛と梳毛

 La Banda ラバンダ(ウール30%、アクリル70%)は、なぜチクチクしないのか。 そんな質問が来たという。 ”そういう風に作ったから画期的です。”と応えたそうであるが、プロに対するプロの回答とは言えない、恥ずかしい話なので、ここで記しておきたい。

織物は歴史が古く、素材による発展が、商品群の発展又、産業の発展につながり寄与してきました。 天然素材の主流時代から化学繊維の主流時代、それぞれの繊維で革新が繰り返され、風合いや見た目、巾などが改善されました。 昔は着物の反物巾ですから、それから、90㎝や100㎝、1110㎝、120㎝、140㎝と広がったわけです。 広がると、横糸を飛ばす距離が長くなるので、機械の進化が必要だったわけです。 椅子張りは、現代の椅子のサイズから137㎝巾でないと取り都合が悪くなり、加工場にとっては扱い悪い、捨てる部分が多くなり、誰にもやさしくありません。 今日では、レザーでさえも137㎝化しています。 薄いジャガードでは、5mの巾を織れる織機で、1.5mの織物を3つ同時に織ることもある位、時代は変わっています。 機械の発展のみならず、今では用途に合わせた開発が進み、機能を持たせた織物が持てはやされています。

そもそも、日本の歴史で大きく分けると、産地で綿織物、絹織物、毛織物、と3つのカテゴリーがあって、それぞれが影響しあって地域性も兼ねて独自に発展してきたと言って良い。 化学繊維でも特徴がある産地のカテゴリーはあるが、論文を書いているのではないので、ここではLa Bandaが、毛織物のカテゴリーにあたるので、”だいたいは”という簡単な説明でそれを紹介したい。

毛織物は、ここ、尾張地区である尾州が主力です。 毛織で爆発的に地元経済が発展した時代がありました。 トヨタは、元々織機を作っていた会社です。 数々の技術を発展させ、自動車産業が主力となっているわけです。 それは大きな例ではありますが、小さな技術革新から科学的な管理まで、何処の会社でも発展と生き残りをかけて常に新しい商品を世に送り出してきたのです。 沢山の良い椅子張りもありました。 殆どが、価格競争に巻き込まれて失っていきました。

さて、毛織ですが、たったの二つに分かれると言って良い。 紡毛織物と梳毛織物だ。

紡毛も梳毛も、元々は輸入した毛から不純物を落とし、糸にしていきます。 どちらも、毛を一面に並べて整えて、それを縦筋に束ねて一本の弱い糸にしていきます。 綿でいうカード工程の様なものです。 紡毛はそのまま糸にし、梳毛は櫛でとかしてから糸にします。 紡毛は、毛方向がバラバラのまま、撚りにかかり、中は空気が多くてふわっと、外はトルクが掛かって毛を抑えます。 従って、チクチクする分、空気があって保温性がよく、冬のジャケットやコートなどに向いています。 毛が出ている織物ですね。 

梳毛は、櫛でとかすので毛方向が一定になる分、撚糸で中から外までトルクがかかりすっきりした糸になります。 普通に膝掛やサマーウールであったり、通気機能と湿度調整機能を利用して夏でも快適です。 一般スーツの様な感じですね。

つまり、La Bandaは、梳毛系の織物で、輸出入の関税を決めるHSコードにおいても紡毛系織物とは全く別な番号となる、別物なわけです。 梳毛は、毛方向を丁寧に整えて、ムダ毛を落とす違いがある。 犬や猫の毛が抜ける時期にとかす、ああいうイメージです。 従って、梳毛は紡毛よりもムダ毛がそがれる分、同じ量から作る工程で原材料が減ってしまいます。 同じ太さにするには、もっと原材料が必要でコストが掛かる製法です。 勿論、くしに付いた毛は捨てずに戻すので原材料の無駄はありませんが、毛足の短いかたい毛は、梳毛にならず違う用途、紡毛やワタとして使うことになります。 

梳毛系というのは、アクリルも入っていますし、使用する機械が昔と違ってリング紡績機とは限らないからです。 梳毛で、紡毛っぽくつくれますし、その逆もできます。 梳毛専門店が紡毛が流行ると紡毛っぽく作ることもあれば、コスト問題でとか、理由は色々あるでしょう。

2020年10月1日木曜日

レザーの類似品についてのページ、サンプル帳に入れました。

 レザーの総合サンプル帳の企画が終わりました。 コピーはしないで下さいという日本語と中国語のページを、いつもの通り入れました。 これが企画の締めくくりです。 大抵の場合、コピーは、日本人が海外の工場に依頼しているという事実です。 大抵、技術途上国では、私が技術指導をしているので、それら工場に依頼が来るのを把握しています。 その証拠を持っていますが、日本では、お客さん又はその関連であるため、言うに言えないだけです。

私の作るPVCレザーは、枠的な規格は数種ありますが、代表なのが発砲体があって、1mm厚のエンボスタイプ。 裏張りは、細分化されていないメリヤスを使用します。  
同じ絞で、同じ色の商品はコピーとなるか、不当競争になるかといえば、それだけではなりません。 樹脂の配合やその生成プロセスで特徴が変わるからです。 化学品であるだけに、見た眼は一緒。 同じカプセルのサプリで中身違いという、高度にそっくりなレベルでの話し。 それで、本社に赤外線分光試験機を導入し、試験して、分子の数量で偽物か本物か見分ける仕組みを10年前に作ったわけです。

実際に、皆さんが海外品と比べて、シンコーのレザーは破れない、クレームがない、海外品より遥かに長く使っていると気が付いていると思います。 知恵に知恵を入れて、同じ商品でも日々改良に改良を重ねて、コストが途中であがろうとも、問題点を減らしていっているからです。 作って終わりではなく、作ってから更に高めている、そういう企画をしています。

今でこそ、織物を携わりながらも素人化している人が多いので、この話が判るか疑問ですが、何処のメーカーの糸であるか、その商標はなんであるか気にしていますか? 商標で、糸の特徴、染色での発色の特徴などが判り、企画段階でどの糸を使うか考慮するのがプロです。 皆さんにはポリエステルであっても、我々は、東レの○○、東洋紡の○○と登録商標で呼んでいます。 ポリエステル100%であっても、製造方法が違うし、樹脂の重合度も違う、発色も、伸びなどの特徴も違うのです。 見た目が似てる、例えばヒートテックと同じような生地の下着があっても、違うのは使えばわかること。 糸の形状すら違うのですよ。 丸い断面の糸ばかりではありません。 速乾させるために面積を増やすのに星型の断面のポリエステルもあります。 同じ規格に見えても全くちがうのです。 我々には、糸の断面形状を見る為の顕微鏡設備もあります。

残念ながら、商標登録のある糸は、海外に価格で押されてしまって、激減してもう10年以上。 それでも、残っている糸を使いこなそうと奮闘しています。 又、糸での戦いだけでなく、我々は糸をケチらずに、打ち込みを上げる(横の糸を打ち込めるまで打って、スカスカにしない)努力をしてきました。 もう一本、入らないか?と部下に聞きます。 一本増やせばコストは上がりますが、変な織物を流通させていたから織物業界が沈んだと思っていますので、良いものを作ることに専念しています。 打ち込みが少ない織物をみると、だから国産は生き残らない、国際競争を甘く見すぎて業界が沈んだのに!と、吐き気がします。 我々の織物は、糸をケチらない作りを今後も徹底し、海外勢に安物でやられる前にどんどん手を打っています。

同様に、PVCレザーも現在、世界一厳しい次亜塩素酸テストと耐アルコールテストが、この本社2階で行われています。 今年、自社設計で作った自動耐アルコールテスト器がフル稼働しています。 一度に24種類のレザーをテストできます。 それでも、1500回、1000種類の試験をするのですから、途方もない手間と時間がかかるテストです。 以前なら、十数人のアルバイトでやっていた試験ですが、コロナ禍で自動化して、間に合わせました。

尚、希望であれば同業者であっても、この自動試験器を原価でお譲りいたします。 なぜ、ライバルに原価で? マヤカシものが国内で流通してしまえば、海外商品がどっと入ってきてしまいます。 結果、産業を痛めてしまいます。 互いに競争して、生き残るべき商品を開発しあって、胡坐をかかずに戦うことが大事です。 戦う製造業の応援は、戦える素材の提供で達成したいと思います。

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勇士求む: 椅子張りのプロとして勝負するなら、名古屋のシンコーで。 プロ中のプロ集団で揉まれてこそ、一流へ上ることが出来るものです。

土地求む: 流通倉庫の居ぬき利用。 

事業引継ぎ致します: レザー、テキスタイル、椅子やベット資材、プラスチック加工、縫製加工他、事業引継ぎいたします。

引っ越ししました。

 個人でレンタルサーバーを借りて、引っ越ししました。 結構、お金が掛かりますが、HPの自由度が増すので決意。 より、知識重視にしています。  張替えてんやわんや というブログ名です。 https://sya-cho.blog/ 是非、引き続きご愛好をお願いします。